
GPSアート、ランニングアートをしていて、一番難しいと感じる題材は「人体」であり、その要因は「曲線」だ。その代表的なモチーフ、それは「女性」である。世の中のほとんどの道は格子状の直線で出来ている特質上、GPSアートのランナーたちはこのモチーフをできる限り避けたいのが本音だろう。



















女性モチーフ挑戦の流れ
初めは、全く曲線らしくなく、というか曲線など全く意識せずに当初は女性を描いていました。どのように変化していったのか、時系列で並べました。
まつ毛
女性であることを表現するために、ふっくらしたシルエットや、まつ毛を使っていた時代の作品。ふっくらしたつもりが太ってしまっている。


ガタガタ道を避ける
この頃からガタガタしたコースを選ばず出来る限り曲線ルートを選んで描画するように心がけた作品。このころ一筆書きや曲線美の可能性を感じ、目覚め始める。
良い地上絵とは道筋に描かれるもの
GPS地上絵師として知られるな作家・大山顕は、碁盤の目上の地上絵について次のように述べている。
銀座で地上絵ってほんと難しくて。まず道が碁盤の目なので、設計のとっかかりがなにもない。ドット絵のようにすれば何でも描けるといえば描けるんだけど、それじゃおもしろくない。良い地上絵は道筋に誘われるようにして描かれるべきものなのだ。「良い地上絵」ってなんだ。つまり銀座やマンハッタンは地上絵に向いていない街なのだ。
DailyPortal Z「銀座でジャメヴゥになる方法」より引用
この文章、「道筋」という単語に鳥肌がたった。俺が文書化できなかった感覚。さすがパナソニックに勤めた作家さんである。一般的な「GPSアートの描き方」講座のブログや動画を見ると、銀座や京都、NYなど碁盤の目、格子状、網目状の道路地図を選択するように進めていることが多い。理由は大山氏の指摘通り「ドット絵のようにすれば何でも描けるから」だ。この「何でも描ける」というのが問題で、「何でも」ということは、その場所である必要性が薄くなる。地上絵はせっかく特定場所との相互作用が強く感じられるアクティビティなのに、それは、唯一無二性だけでなく動機も弱める。
GPSアートのジャメヴゥ感
地上絵はどこかの目的地に向かって歩いているわけではなく、ふだんの移動の論理とはまったく異なる動き方をする。そうするだけで、街のシーンの移り変わりに脈絡がなくなって、知らない街に見えるのだ。
DailyPortal Z「銀座でジャメヴゥになる方法」より引用
大山氏は同じブログで、地上絵が持つ「概視感欠損(ジャメヴゥ)」にも触れていてとても興味深い。僕が解釈するならGPSアート上での「ジャメヴゥ」とは、よく旅行などで初めて歩く街で感じる新鮮な体験を、よく知っている街でも感じるという、錯覚に似た不思議感覚だ。自分の知ってる街なのに「旅行している気分」になるのだ。これはGPSアートをしている人なら「あるある」体験だろう。大山氏の着眼点が面白いところはこの「ジャメヴゥ」が、経路の脈絡のない走行によりGPS地上絵でも起こる現象と捉えていることだ。これについては深いので別の機会に詳しく述べたい。



一筆書き
曲線と一筆書き両方を兼ね備えたコース。ゼムピンにできそうな仕上がりで商品化したいほど綺麗に決まった。こんなルートを増やしたい。

くびれ
曲線美に自信がついた作品。これは既に設計していた「旗を持った女性」の習作だったので、この曲線で十分に美術として通じると確信でき、のちの作品に繋がった。

この絵がRedditで削除される
この女性のくびれGPSアートだが、海外の有名掲示板サイト「Reddit」のStrava artコミュニティーに投稿したところ、コンテンツポリシーに反するという理由で削除される事件が起こった。同コミュニティーには男性器が多く投稿されている(一番多い絵なのではないか?)のだが、なぜか露出さえないお尻がポリシー違反となる珍事。何が起こっているのだろう??? 再投稿しようにもコミュニティーへの投稿許可が(再申請しても)でない。困ったので、新たに、ランニング限定のSTRAVA artコミュニティーを作った。どうなることやら。
女性らしい顔


点繋ぎのないヌード
ほとんどクロッキーやデッサンを描く感覚で設計。なので速度感や大胆さ、精密と省略のバランス、主体と余白、全体としての構図もバッチリ決まった超満足作。クサリ走法、十字走法、などの奥義も総動員。曲線作品や多角形GPSアートでありがちな点繋ぎゼロ。フォロワー数がほとんどないThredsでも300を超すいいねがついた。

曲線は小さく見えがち
曲線コースの悩みだが、規模が小さく見えてしまうという錯覚が起こる。この現象は、作品が短距離に見えてしまい、長距離大好きの欧米からはスルーされる予感大。盛大にガタガタした超巨大作品だけが好まれる傾向が長い間続いており、でも、ブレずにこの良さを貫き、楽しんだ方が得である。
初めての全身像
これも、お尻と同じ頃に既に設計し終わっていたコースで1年以上も発表待ちであったもの。ちょうど女性テーマの公募があったので、そのタイミングでランニングして公開。あまり男性の願望目線のエロチックな女体にならないよう、女性目線の女性らしさを意識。阿佐ヶ谷駅周辺特有の曲線的な地理のポテンシャルを存分に活かした。

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毎年「ピンクリボン」をはじめ女性をテーマにしたGPSアートコンテストに参加し、ほぼ毎年優勝しています。
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