書籍「スマホ脳」感想文:奪われる集中力

書籍「スマホ脳」感想文

ここ10年ほどの読書の中で圧倒的に面白かった本「スマホ脳」。これはコロナ前、2018年頃にベストセラーになったスマホ依存症警告本で、他のスマホ依存関連本と比べて明らかに説得力があり、人間の本質に迫っており、統計やアンケートなどのエビデンスに裏付けられた重要なデータが紹介されている。

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ベストセラー本

コロナ直前にベストセラーになったスマホ中毒警告本、という認識でスマホの害悪がたくさん掲載され読むとスマホがさわれなくなるほど衝撃的な内容なんだろうな、と想像していたが、人間と脳についての解説に重点が置かれ、20万年にも及ぶ人類の歴史の中で、本来の脳の習慣にあまりにも突然に現れかけ離れたスマホ習慣に脳は適用できず、それが理由で人々の精神は病み、体調不良を起こしてしまうという内容だった。つまり、スマホというより本来の人間がいかに古代狩猟習慣の中で暮らしていたか、その古代習慣にあった生活に逆らわないことこそ人間のメンタルに良い、とする。

本書の概要

スマホ脳の本文の概要をまとめて表にした。第一章からとても面白く、実験やアンケートによるエビデンスに裏付けられた考察はとても面白い。一方で、進化の定義が「生き残ってきた」だけである解釈に違和感もある。

内容補足
①人類はスマホなしで進化した「進化」とは、上位発達した一方で単に死なずに生き延びただけとする発想。進化=生存しただけという定義に同意するかはさておき、とても興味深い解釈。
ストレス、鬱には役目ある処理できないタスクで埋められてしまった生き物は引きこもり嵐が過ぎるのを待つことで「生存」できたとする発想。鬱期間も良しとして、休み、タスクをゆっくり無くしていこうとする解釈。天敵から身を隠し生き延びよ。
③スマホは最新のドラッグ通知音の「もしかしたら」が中毒になり、果実(目標)より優先されるという説。これも脳が20万年の進化で得た生存本能だとする。これは主にSNSの罪が重い。いいね数、コメントへの期待感が1日の集中力を奪い仕事が捗らない。だが過去20万年はこの注意散漫さで猛獣に気づき生き延びることができた大切な能力であるとする。だがスマホの時代ではドラッグに成り下がった
集中力こそ現代の貴重品マルチタスク、ながら見、通知音、などは「もしかしたら」感を発動させNG。集中力は長期記憶器官を発動させシナプス連結信号を常時交流に切り替える。これは短期記憶にはない。スマホをポケットから取ることが集中には大切。1時間に一度見る程度に。
⑤SNS最強のインフルエンサー防衛的進化から悪い噂に過剰に反応する気質を強く残してきた人類はSNSにドハマり。一方、上流の生活に対しては嫉妬とストレスで鬱傾向になりやすい。

人類20万年の習慣の重さ

それにしても本書を読んで「20万年続いている人間の生活習慣」は現代人に今なお影響し引きずっていることに驚かずにはいられない。この「20万年、2万世代つづけてきた習慣を尊重しよう」とする姿勢は、スマホ以外にも、食事や生活習慣すべてに言えることだろう。塩、砂糖、酢、などの自然調味料の結晶は人工的に生成されるようになってまだ1000年ほどしか経っていないのではないだろうから(たぶん)、塩分、酸味、甘味を人類が自由に調整できる前の時代とくらべて人間の食べ物は飛躍的に変化し、そのことで台所をめぐる生活習慣も大きく変化しただろう。最近では味の素や人工甘味料、着色料などの添加物が入っていることが日常化しつつあり、そのような人工調味料への依存性、有毒性、発がん性が外国では多く指摘されており、その悪影響と共存するか否かは長く論議が続いている。

古代の生活習慣に適応すべきか、スマホに適応すべきか

だが、今後将来の人類はずっとスマホやそのようなPCデバイスに依存して生活していくことはもはや避けられないことが想像できる。とすれば、この本がいうように古代の習慣に目を向けることも自己を取り戻すにはとても大事であることは理解できる(ホリエモンがそのように説いているらしい)が、スマホなしには生きていけないこんにち、スマホに最適な人類になっていくしかないようにも思える。だが、人類の歴史20万年だとして、スマホ20年の歴史は人類史の1万分の1にすぎず、人がスマホに完全に最適化するには今後10万年はこの習慣を続けていくことになる。すくなくとも我々が生きているうちはそんな進化が起こるはずもなく、現在生きている我々はやはり古代の生活習慣を尊重してこそ自己メンタルや健康を守ることができることから、やはりこの本は正しいと結論つけました。

集中力3部作

参考動画

この記事を書いた人

mojigumi

「もじぐみ」の代表、コウです。
専門は企画・出版・編集・印刷、Webデザインと管理。最近はブログ、動画、3DCG、AR、LINEスタンプ等のコンテンツ配信にも力をいれ、自分自身もランニングアートでコンテンツ化に努めています。