フェイクGPSアート問題まとめ

GPSアートにフェイクなんてあるの???はい、あるんです。検証が困難である理由でか、ランニングアートにはフェイクや実際に走るのは無理なものが多くあり、下記事例のような某運送会社CMのランニングアートが完全な偽物だったというニュースもある。

フェイク記事だったランニングアート
Gizmodoが配信した世界最大のランニングアート
のちにGizmodo自体がこのニュース内容がフェイクだったことを投稿
ニュースの翻訳
世界最大のGPS追跡最大の描画は完全な偽物です

あなたはGPSトラッカーのピンポイントDHLメーリングによって作られた、いわゆる「世界一大きな絵」を知っていますか? そう、コメンターを疑っている人は皆正しかった。それは完全で全くの偽物だ。 アーティストのErik NordenankarがDHLの倉庫に入れられることを許可されていましたが、実際のメールに関する限りはそれについてです。 彼のウェブサイト上のメモは「これは架空の作品です。DHLはいつでもGPSを輸送しませんでした」と述べています。 つまり、GPSトラッカーもDHLピンポイントのグローバルメーリングもありません。 偽物の1つだけの大きな蒸気の山。 [ガジェットラボ]

ストラバアートの代名詞=ステファン・ランドも

ロケットニュースに投稿されたネットニュースだが、これも一部に実際に走ってないものであることがわかっている(元となったフェイスブック投稿のコメント欄で実際に走っていないと本人のコメントがあった)。特に、ステファン・ランド(Stephen Lund)によるTour de Victoria logoハチドリの羽を拡大するとわかるが、ルートには道さえなくビルを突き破ったルートや、中には川を橋を使わず渡っていて、地図を拡大すればフェイクとわかるコースだらけだ。しかし、ネットニュースにとってはバズれば目的達成なので、訂正も検証もない記事がほとんどでとても残念な限り。

誤解を生むベクトル走法

ベクトル走法とは、道の通り走らず、ルート上の1点にさえいれば、点の間の通ってないルートも「通ったことにする」考えの流派。点だけランナーが描き、線を結んでいるのはアプリ。つまり、描いたのは本人ではないことからハック的で賛否両論あるだろう。ARゲームの元祖といわれる「イングレス」にフィールドアートという遊びがあり、点を結ぶアートとしての要素がこれと似てるし、先のステファン・ランド作品にも多い画法なので、ファンに受け入れられているが、GPS精度がはるかに高まっているし、GPSからARに(おそらく)移り変わろうとしている5G以降、必ず誤解を生むだろう。当然だが、五輪やマラソン大会でベクトル走法なんてしたら一発失格、どころか選手生命が終わる。

ビクトリアツアーロゴの問題点

ストラバアートの有名人=ステファン・ランドの代表作として超有名な、「ビクトリア・ツアー」のロゴコース。これも本人自身のブログで説明されている通り、ベクトル走法(点結び)で描かれていて、本来の絵柄は右下のとおり。まったくサステナビリティのないルートとして公開されており再現は極めて困難。これを「実際に走った」とミスリードさせている実情に気持ちは複雑だ。

ステファン・ルンドの代表作「ビクトリア・ツアー」のロゴ
ステファン・ランドの代表作「ビクトリア・ツアー」のロゴコース。ベクトル走法で描かれていて、本来の絵柄は右下の図になる。
ベクトル走法はStravaの文化か

こういった作品が毎年と言っていいほどストラバアート選抜で選ばれており、ベクトル走法(点結び)これはStravaの文化になっている。

問題点を把握しルールづくりの布石に

下記ハフポストやロケットニュースでも「実際走ったルート」であるかのようにベクトル走法の作品が紹介されており、もちろんトラッキング方式に触れていない。結果的に走って描いた、ルートを走った、という印象だけが広がり、結果的になんでもありの状態になっていることが非常に残念。アートなのかスポーツなのか、ランニングアートの境界が曖昧であることで生じるこれらのハックは、この分野にははっきりとしたルール、ガイドラインが必要であることを物語っている。でないと、いつかハックが公になった時、全愛好家がバッシングされるだろう。

課題

本来、GPSログとは厳密には点である事実から、1次元画法に厳しく言及することは却って混乱を起こしうるので、この問題はルールづくりの必要性が生まれるまでは、問題点を把握し、まとめ、来たるべき時にルールづくりをする展望をもつことと考える。

この有名な「ランニングウーマン」もフェイク

Sylvia RowlandのGPSアート
Sylvia RowlandがGPSアートコンテストに出品したランニングウーマン

こちらは2013年開催のUnderArmer(アンダーアーマー)主催「ルートアートコンテスト」でベストアーチスト賞に選ばれた、元レゴ社勤務のゲームクリエイター・Sylvia Rowlandさん作の「Running Woman」だが、拡大してよくみると、家やビルを突き破ったり、しかも建物内にも点があり、ベクトル走法とも言えず、ランニングで再現不可能。道を使ってる箇所もわずかでルートになりようがない。そのことが判明すると本人がコメントで「走ったわけではない」「走らなくてはいけないというルールはない」と創作を打ち明かし開き直っている(下記コメント参照)。走ることすらできないフェイクルートでもネットでは真実のようにシェアされ、今でも伝説として語り継がれてしまっている。

ランナー本人が走ってないとコメント

ランナーのSylviaさんのコメント
ランナーのSylvia Rowland(シルビア)のコメントによると「走ったわけではない」「走らなくてはいけないというルールではない」とすっかり開き直りっていることに、周りは「FAKE」の文字が埋まる。

ルートを拡大すると…

コンテスト開催の際は、このような抜け穴ランナーが現れないように、しっかりとしたガイドラインを設けることが重要であると感じさせる悪しき前例として、参考にここに取り上げた。

フェイクルートを見分ける方法

本当に走ったり、ライドしたルートなら、下記一覧にした情報が残っており確実に走った証拠となる。GPSアートのクリエーターたちは、創作の苦労と達成感からルートに関わるいろんな生データ公開するだろう。そこで、安心できる信頼できる事例と怪しい事例の見分け方を紹介する。

信頼できる事例

  • ランログがある(ランアプリやGPSロガーの軌跡データ)
  • ルート線にノイズがある(GPSログには誤差によるノイズがあるはずだが、ないと実際に通っていない可能性が)
  • ルート情報がある(距離、タイム、走行日時の3セットが揃っている)
  • ルート走行中の写真がある(苦労したルートは、その足取りを写真や日記に記録するだろう)
  • アプリやロガーが書き出したタイムスタンプ付きGPXがある(GoogleMapsマイマップなどで公開されたノイズ入りのコースがある)

怪しい事例

  • GPSアートは素晴らしいが、それ以外の情報がない(距離、タイム、走行日時などが公開されてない)
  • ランアプリのシェア画像や、ログ画像がみあたらない(ランアプリから書き出されたシェア画像にはタイムが合成されるのでそれが完走証になるが、何かのスクショだけで何も刻印がないと…)
  • 絵がリアルすぎる(すべての道は人工的であり、リアルすぎる道などない)のは要注意。公園でのランならリアルもあり得る。
  • 迷ったり道を間違えた形跡がない(凡ミスから工事中まで、ルートでのハプニングをどうカバーするかもGPSアートの要なのだが、それ自体ない)

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ジョセフテイム作「浮世絵」
ジョセフテイム作「浮世絵」の拡大図。隅田川に3つの点が重複。ということは、橋のない川の真ん中から船、または泳いで1~3人が同時に岸に向かったという大仕事だ。

世界のGPSアートについてのまとめはこちら

このページで扱ったフェイクGPSアート以外にも、お絵かきランナーについてのまとめ記事です。

この記事を書いた人

mojigumi

「もじぐみ」の代表、コウです。
専門は企画・出版・編集・印刷、Webデザインと管理。最近はブログ、動画、3DCG、AR、LINEスタンプ等のコンテンツ配信にも力をいれ、自分自身もランニングアートでコンテンツ化に努めています。